2007-07-29

2006-07-04 (火)  リストバンドの悲しみ

 緊急入院して一番に、「リストバンド(wristband)」装着をお願いされた。

 患者取り違え手術とか医療ミスのニュースは聞いた事があったが、それを防ぐ為のものとして、患者の利き手とは反対側の手首(リスト:wrist)に薄いプラスチック製の柔らかい「腕輪」(band)をつけてもらいたい、との事。そこに印字されている患者氏名、ID番号・バーコード(bar code)と、患者本人への呼びかけ等をして、患者本人である確認をする。

 このリストバンドは原則として、一度装着されるとハサミで切らないと外せない程度に手首に軽く巻かれる。入院中は常時装着しなければならなく、勝手に外せないという事になっているらしい。外出や外泊の時は外して貰えるが、帰院後はすぐに装着する事になる。
 
 入院時に説明を受けた後、手首にこれを着けられた時、なんとなく、犬か猫になった様な気分にさせられた。また、手洗いを徹底する様に言われているのに、この手首のリストバンドは邪魔で手首が洗いにくい。

 具体的にどういう時に使われるかというと、私の入院した病院では、例えば病室で点滴や輸血(blood transfusion)等をする時、まず名前の確認をされ、投与する点滴薬等の名前と開始時間の確認をし、「バーコード・リーダー」で患者のリストバンドのバーコードを“ピッ”と読み込ませる。同様にして点滴バッグ(点滴液の入った透明な袋の事)や輸血バッグについている薬のバーコードも「バーコード・リーダー」で“ピッ”と読み込ませる。薬を持ってきたナースや先生が胸に付けている名札のバーコードも“ピッ”と読み込ませる。これであらかじめコンピューターに入力されている項目との照合がなされる。患者名と投与薬、投与時間等が一致しなければバーコード・リーダーに許可表示が出なく、患者が違うのか、薬が違うのか等が確認出来るという風になっていて、ミスが起きない様に何重にもチェックしているらしい。

 最初のうちは、名前を聞いてくれていたが、すぐに「○○さん、何々の点滴です。バーコード、お願いします。」というナースが多くなる。スーパーでの商品じゃあるまいし、せめて『リストバンド』と言ってもらえないか、とナースにお願いするが、ナースも多くおられるのでその度に一々お願いするのも次第に面倒になってくる。そのうち、ナースが『バーコードをお願いします』とリストバンドの照合をする度にしばらくは「わん!」と吠えてから応えていた。

 話はそれるが、私は入院時『食じ記録表』なるものを渡された。毎食どれ位の量を食べたか患者が記入する事になっている。【食じ】の“じ”が平仮名になっているのを見てピンと来た。『ああ、きっと【食餌】って書くんだ・・・』医学用語で食餌療法という言葉があるが、【食餌】と書かれると“エサ”という字から多分入院患者の食事は犬猫扱いのエサかと思ってしまう人もいるのではないかと思う。そうでなくてもやはり【食餌】と書かれたらいい気はしない。そこを考慮してあえて平仮名にしたのだろう。

 患者取り違えや薬の投与間違いを防ぐのに有効な手段とは理解出来るが、こうしてリストバンドを付けているとやはりなんとなく犬か猫の様に首輪を付けられた様な気がしてくる。

~~~~~~~~~~~~~~~~
 今回外泊する時、エレベーターでナースに会い、「せっかく外泊するのならリストバンドを外しましょう、帰院されたら、またご連絡下さい、新しいのを用意しますので。」と言って、ハサミで切ってくれた。入院以来初めて外して貰ったので、小さな事だと思われるかもしれないが、とても嬉しく開放された気分になった。

 帰院後、治療開始に備えて新しいリストバンドをナースが持って来、装着する事になった。「どれ位のきつさが良いですか?」と巻き具合を訊いてきてくれたので、自分で少々手首に巻いてみて、嵌まっているがちょっと頑張れば手首から抜く事が出来る程度の所(ゆるさ)で留めて貰う事にした。平生は付ける様に心がける事にするが、これで手洗いやどうしても外したい時に自分で外す事が可能になった。


 写真の1つは手首に着ける直前の状態で、これを巻いて長さが調節出来た所でプラスティックのストッパーでカチッと留め、残ったバンド部分をハサミで切り落としてリストバンド装着完了となる。外す時には長さ調節のバンド部分にハサミを入れなければならず、ストッパー部分は一旦留めると外せない様な構造になっている。

0 件のコメント:

コメントを投稿