2007-03-31

2006-03-27(月) 初めての骨髄穿刺(マルク)

 緊急入院、採血の次に待っていたのは骨髄穿刺(bone marrow puncture)だった。ドイツ語で骨髄を意味する『マルク(Mark:骨髄穿刺のこと)』とも言う。私の白血病(leukemia)の種類を詳しく調べる為に骨髄液(bone marrow aspirate)が必要で、胸骨(sternum)に針を刺してそこから採取するというのだ。ただでさえ尖端恐怖症と言うか針が余り得意でないのにまた刺されるのだ。だが我慢するしかない。看護師詰め所の一角をカーテンで仕切った処置室に車椅子で連れて行かれ、ベッドに仰向けに寝かされた。これから私の担当になると言う先ほど診察室であったKB先生、私の左手首にカテーテルを挿し損ねた女性の若い先生(FS先生)、顔の大きそうな若手のTS先生の3人がおられ、TS先生が施術する様だった。

 胸をイソジンという茶色い消毒液に浸した綿棒で念入りに消毒された後、中央に丸い穴が一つ開いた大きな緑色の布を開いて胸を中心に被せられた。顔まですっぽりと覆われた為、あとは何が行なわれているのかぜんぜん見えず、不安が募った(私はじかに見た方が納得出来るというタイプである)。「今から麻酔(anesthesia)注射をしていきます。先ず胸に麻酔をします、ちょっとチクッとしますよ」TS先生の声が聞こえる。痛い。「もう一度今度は骨の表面に麻酔をしていきます、少しチクッと痛みますよ」ううっ、痛い。「どうですか、痛いですか」針か何かで皮膚表面をつついているらしかったが、もう何も感じなかった。痛くないですと答えると「では今から骨髄穿刺を行ないます。針を刺して骨髄液を取りますので、ぐっと押されますよ」骨を突き破らなければ骨髄には到達しないのは想像出来る。グッと胸が押され針がグリッと差し込まれる瞬間、麻酔の効きが悪いのか鈍い痛みがあった。ううぅ~・・・「今から骨髄液を採って針を抜きます。抜く時にグッと引かれる様な痛みがあると思いますが頑張って下さい」(経験したことのない感覚)・・・「はい、終わりましたよ」何も見えなかったが、そのつど声をかけてくれるのでその度に息を止めたり気構える事は出来た。しかし何でこんな目に遭わなければならない、とか、何で病気になってしまったのだろうと意味もなく涙が出てきた。止血の為の大きな脱脂綿を止めるのに超特大の強力な絆創膏をバッテンに貼られた。

 続いてTS先生は手慣れた様子で右手首にカテーテル(留置カテーテル)を挿入された。輸血用だという。左手首は先ほどFS先生に挿入して貰い損ねている。今度も挿される時は痛かったが、持続するひどい痛みはなかった。そうしてやっと施術室から病室へ戻り、止血の為30分程仰向けに寝る様にといわれ、しばらく安静にした。

 先生も看護師さんも入院患者さんも皆マスク姿。日常生活から隔離されたことは確かだった。病室はお盆に有名な山が正面間近に迫る、眺めのすばらしい4人部屋で、私の他には先輩患者さんが一人おられるだけだった。チラッと挨拶しただけだったが同じ病気の人なのだろうか。恐らく治療で毛が全部抜けているのだろう。マスクをし、毛糸の帽子を目深にかぶり、目だけがこちらを覗いている。なんだか怖い顔に見えた。自分も毛が抜けるとあんな風に怖い顔になってしまうのだろうか。そうだ、眉毛もなかったから怖く見えたんだ。治療でみんな抜けてしまうんだ・・・。独りになって検査入院のつもりで持ってきた荷物を自分に割り当てられたテレビ付きの収納棚とロッカーに収めつつ、不安でまた涙が浮かんできた。マスクは普段つけ慣れていないせいか眼鏡が曇ってとても鬱陶しい。姉が買っておいてくれたサンドを食べた時は既に15時20分。

 16半頃、今度は肺(lung)・腹部(abdomen)のレントゲン写真(an X-ray (photograph); a roentgenograph; a roentgenogram)、および心電図(electrocardiogram;ECG)をとりに車椅子で連れて行かれる。

 夕刻ようやく輸血(blood transfusion)してもらう。ところが色が違った。赤くないのだ。黄色に白を混ぜた様な不透明な液を何なのかと聞くと血小板(platelet)なのだそうだ。貧血もひどいが血小板が非常に少ないのでこの輸血を先にすることになったのか。赤い方(赤血球;red blood cell;RBC)の輸血は明日だと言われた。気が遠くなりそうだった。血小板輸血では人によって体が痒くなる等の症状が出る事があるので、異常が出たらすぐ連絡してと言われる。幸い、一瞬ポチッと水泡の様なものが腕に一つ出たがすぐに消え、痒くもなく無事に点滴する事が出来た。

0 件のコメント:

コメントを投稿