今日、成人ALL(acute lymphocytic leukemia;急性リンパ性白血病)におけるHyper-CVAD / High-dose MTX-Ara-C療法の治療成績という記事を見つけた。これは私が入院中に受けたのと同じ名前の治療法である。この記事を見るまで、私はHyper CVADという治療法を受けているとずっと書いてきたが、正式には『Hyper-CVAD / High-dose MTX-Ara-C療法』を受けてきたと書き直した方が良いかなと思った。
入院当初の説明では、化学療法(chemotherapy)は計8回あり、それが終わったら、移植(transplantation)を考えた方が良いと言われていたが、全く同じ化学療法を8回受けるのではなく、実際は最初に【Hyper CVAD療法】を受け(1クールという)、それを終了すると次(2回目)は【High-dose MTX-Ara-C】という別の薬剤を扱った化学療法を受ける(1クール)。ここまでで1セット(即ち、合わせて2クール)である。この繰り返しで計4セットこなすと、合計8回の化学療法を終える事になるのだ。それは理解していた。
この化学療法名は使われている主な薬剤の頭文字を使っている様で、詳しく書くと、Hyper-CVAD (hyperfractionated cyclophosphamide, vincristine, Adriamycin, and dexamethazone) / high dose MTX-Ara-C (high dose methotrexate and cytarabine)と、とにかく長い。確かに前半は「ハイパー・シー・ヴァッドを行ないます」と聞いた覚えはあるが、後者に関しては「メソトレキセート・アラ・シー」等という言葉ではなく、「二つ目の化学療法をします」としか聞いた覚えがない。その為、この化学療法の名称が「Hyper C-VAD」なのだと勘違いしていたのかもしれない。
ちなみに私の場合は、化学療法最終段階(丁度、末期癌が発見された母の入院やごだごだ等が急に起こった時期にあたるのだが)で、それまで順調に経過していた私がひどい肺炎(pneumonia)を起こしてしまった為、先生は私に8回目にあたる最後の化学療法【High-dose MTX-Ara-C】を受けさせる事を断念され、骨髄移植(bone marrow transplantation;BMT)を急がれたという経緯がある。
さて、今回見つけた記事は、自治医科大学医学部紀要で、ここで成人のALL患者(*)に実施された、Hyper-CVAD / High-dose MTX-Ara-C療法の治療成績である。この抄録は2005年末に発表されており、その治療成績は2000年から50ヶ月分(4年2ヶ月)の統計であるが、無病生存率42%、全生存率(**)85%と良好であったという。発表時点で、いわゆる5年無病生存率迄は出ていないが、これを発表した病院で以前実施されていた治療法での長期生存率(多分、5年全生存率と思われる)が35-40%というから、それに比べると非常に効果のある治療法に思われる。この治療法は、寛解期の早い時期に、移植可能な患者には移植する事を前提としている様なので、その上での成績でもあると考えられるかもしれない。
*一般に、成人ALLと小児ALLとは区別して考えられている様だ。自分はいつも不思議に思っているのだが、同じALLでも、その治癒率は成人と小児との間に大きな開きがある。そして治療法も異なると主治医から聞いた事があるので、ここでの治療成績は、成人のものであって、子供のALLの場合とは別物と考えた方が良いと思われる。
**全生存率というのは、恐らく無病生存者と、治療後、何がしかの病気を発病したとか、具合の悪い人とかも全て含んだ、要するにその時点で治療後生きている全ての人の割合を指しているのだと思う(もしかしたら再発してもとにかく生存している人も含んでいるかもしれない)。
私が治療を受けた病院もこの同じ治療法を導入しており、入院当初、4年迄の成績しか出ていないと先生から言われていた記憶がある。自分が入院したのは2006年3月なので、主治医から受けた説明とこの結果はほぼ同じの様な気がする。その当時私は、比較的新しく開発された治療法の一つなのだと理解していた。そして、血縁でHLA(骨髄の型;組織適合抗原:Human Leucocyte Antigen)の一致する人がおれば、移植する方向で治療にあたるともいわれていた点も、この抄録の治療方針と一致している様に思われる。
参考までに、入院中主治医から訊いた話なのだが、日本の病院では、成人ALLの患者にこのHyper-CVAD / High-dose MTX-Ara-C療法を採用するグループと、JALSGというグループでの治療法を採用する病院の2つに大別されるらしい(もちろん、他の治療法もあるそうだが)。Hyper-CVAD / High-dose MTX-Ara-C療法は、外国で開発された治療法、JALSGは日本のグループが研究開発した治療法、との事である。
私はこの2つの治療成績を比較するつもりはない。どの病院もきっと、これがベストと思われる治療を行なってくれていると思うからだ。特に初発の急性白血病の場合、大抵は緊急入院、即、治療開始となる事が多いと思う。すると、自然と入院した病院が採用している治療法になる流れとなるから、治療法選択の時間が無いと考えてもいいのではないだろうか? それに、病名宣告を受けたとしても、先ずはどんな病気なのかを知るのに手一杯で、どの治療法がいいか、等と悠長に調べている時間はないだろう。それが可能な人は最初の治療開始前に、初めから自分の納得いく治療を実施している病院へアクセスするがベストだと思う。
治療成績も気になる所だろうが、緊急を要し、かつ長期にわたる治療となる病気なので、多分この状況で大事なのは、入院した病院の先生を如何に信頼出来るか、という事の方が大きいかもしれない。既に治療が開始されたが、どうも病院や先生に信頼が置けないと思ったならば、取り敢えず外出許可が出る位の状態になったら、転院する方向を考えてもいいかもしれない。しかし、一旦開始された化学療法を途中で変えるのでは無く、同じ化学療法を行なっている病院を探して移った方がいいのではないかと思う。というのは、運悪く、早期に再発(recidivation)してしまった場合、同じ薬剤を使った化学療法では白血病細胞(leukemia cell)をやっつける効果が余り期待出来ない為、他の化学療法を選択する事になると、かつて先生から言われた事があるからだ(寛解後5年位経過した後の再発ならば、再度同じ化学療法も検討の余地があるらしいが)。つまり、再発の場合、その薬剤耐性の白血病細胞であると考えられるので、違う薬剤を使った治療を検討する事になるらしい。だから、もし治療途中で転院し化学療法も別なものに変えてしまったのなら、万が一にでも早期再発した場合の、次なる治療法の選択肢が少なくなってしまうのではないかと思うからである(詳しい事は主治医にご相談下さい)。それに、自分に合っている治療法が何なのかなんて、比較する事等出来ない。それより、先生と病院を如何に信頼出来るかの方が、人間本来がもつ治癒力を高められそうな分、いい様な気がする。
話がそれてしまったが、この化学療法の治療成績が出ている抄録が掲載されたアドレスを、参考資料として、最後に記載しておく。
奇しくも明日は移植後丸2年、入院から起算すると2年7カ月以上が経過した事になる。幸い、再発せずに無事経過している。運もあるかもしれないが、この治療法は私にはよく合っていたのかもしれない。最後まで心配してくれていた母にも、心の中で、「無事ですよー」と感謝の祈りを捧げる一日である。
参考:『当科における成人ALLに対する地固め療法としてのHyper-CVAD / High-dose MTX-Ara-C療法の治療成績 (Consolidation therapy of adult acute lymphoblastic leukemia with Hyper-CVAD / high dose MTX-Ara-C) 』
2011/03/ 13 (日) 東北関東大震災、献血のご協力を!
-
マグニチュード
9.0、世界史上4番目という未曾有の大地震が東北・関東地方で起こり、甚大な被害が出ており、大津波による、目を覆いたくなる様な被害には、ただただ、被災者の皆様のご無事を祈る他ありません。
・ 震災直後の日本全国の震度(気象庁)
・ 三陸沖津波観測情報(気象庁3月11日15時25分)
・ ...
13 年前